先人と未来に捧げる森づくり
1.伊賀地域の森林整備
伊賀地域の森林面積は、約4万ha。その60%の約2.4万haが、スギとヒノキの人工林です。その大半は昭和の大造林で植林され、今では55~60年生になっています。さらにその多くは、木材価格の低下を主要因とした林業衰退に伴い、手入れの遅れている森林となってしまっているのが事実です。しかしまだ手遅れではなく、20年ほど前までは適性に管理されていた短期放置林であり、今後の整備で遅れを取り戻し、健全な森林にすることは大いに可能です。人工林はその名のとおり、人工的につくられた森林ですから、人工的に管理、整備をしなければ、森林の公益的機能が低下し、土砂災害等の危険性があります。
戦後復興の木材需要の高まりにより、国策として造林が進められ、広大な人工林がつくられましたが、高度経済成長に森林の生育が間に合わず、外材が自由化され木材価格が低下したことが、昨今の林業の衰退を招く結果となりました。奥山まで広がった人工林のほとんどが、当初予定された収穫期を過ぎても未利用なままとなっているのです。
この未利用資源の源は、戦後復興のさなかに我々の先祖が汗水をたらして植林した労力であることを忘れてはならない、という想いがわたしたちにはあります。
これらを踏まえ、伊賀地域の森林整備とは、間伐と間伐材の最大限の利用であると考えています。
2.森林整備の方針と目指す姿
- ①短期放置林の整備をすすめることが現在の課題であります。間伐は採算性を考慮し、搬出間伐を優先的に導入していきます。
②整備を進めた人工林は、搬出により採算性のある森林とそうでない森林に分類します。前者は主伐から植林、保育し生産林として循環していく森林。後者は間伐・利用を繰り返し、針広混交林となって、最終的には天然林の位置付けとなる森林です。
伊賀森林組合ビジョン2030
スローガン
我々森林組合系統は、厳しい林業経営環境において、地域の森林を守り育て、組合員の経済的社会的地位の向上に取り組んできました。
令和6年度より森林環境税が広く国民から徴収される中、地域の森林整備の主たる担い手として、森林環境譲与税の活用に協力しつつ、引き続き適切な森林の利用・保全を通じて森林の持つ公益的機能の維持・増進を図り、SDGsの達成に貢献いたします。
その上で、先人たちが植えた人工林が成熟期を迎えた今こそ、森林組合系統を挙げて、持続可能な林業経営を通じ、以下の3つの課題に取り組んでまいります。
(1)組合員サービスの向上
組合員の意向が多様化している中、協同組合として組合員に対して「何ができるか」を考え実践します。その一つとして、組合員への一層の利益還元を実現します。
(2)働く人の所得向上・就業環境改善
他産業との賃金格差や労働環境等の課題がある中、内勤職員・現場技能者について所得の向上・労働安全対策をはじめとした就業環境改善を進めます。
(3)事業拡大・効率化による経営の安定
人工林が成熟期を迎え林産事業・販売事業が拡大し、また森林環境譲与税や森林経営管理制度、森林組合法改正などの新たな仕組みが始まった中、事業拡大やICTの活用を含めた効率化を進め、安定的黒字経営を実現します。
運動期間
令和12年度末まで
10年後の夢・目指す姿
伊賀地域の森林・林業において中心的な役割を果たし、組合員に信頼され、気軽に訪れてもらえる森林組合。
内勤職員、現場技能者の充実した人員を確保し、新たな技術をいち早く導入、集約化施業の規模拡大と新規事業を含めた幅広い事業展開を行ってまいります。
三重県、伊賀市、名張市とさらに強固な関係を築き、その活動を広く情報発信することにより、地域住民にその存在を認知されるプロフェッショナル集団を目指します。
取組内容
1.都道府県・市町村と連携した地域森林管理体制の確立
(1)地域の森林管理方針(長期ビジョン)の協議
森林環境譲与税や森林経営管理制度により、地域の森林管理における市町の役割が高まっていることを受け、地域森林の長期的な管理方針について伊賀市、名張市と連携し、持続可能な林業経営と森林の公益的機能増進につなげます。
(2)森林環境譲与税の有効活用
森林所有者の代表として森林環境譲与税の使途に関する提言・要請を行うとともに、予算化された施策の推進に協力します。
また、伊賀市、名張市とともに森林環境譲与税の使途や成果について、積極的な広報・普及啓発活動に努めます。
(3)森林経営管理制度の推進
森林経営管理制度が円滑に進むよう、意向調査などの伊賀市、名張市の行う事業への取組みに積極的に協力します。
また、「意欲と能力のある林業経営者」として登録を受けるとともに、伊賀市、名張市より経営管理実施権の募集があった場合は、林業経営が成り立つか否かのリスクを勘案したうえで、取得を推進します。
2.循環型林業の確立と系統の木材販売力の強化
(1)森林の適切な整備と災害対応
近年激甚化しつつある豪雨災害を受け、森林の持つ多面的機能や環境保全に住民の期待が高まっていることから、健全で豊かな森林づくりに向け、引き続き集約化施業などの森林整備を推進します。
また、災害発生を未然に防ぐため、行政や電力・道路などのインフラ整備機関と連携し、災害に強い森林づくりや保安伐採などに貢献します。
(2)低コスト・循環型林業の確立
各種コスト低減に向け、ICT技術の導入等を進めるとともに、地域にあった低コスト・循環型林業を確立し、森林所有者の所得向上を目指します。
また、GISシステムを高度化し、集約化施業により長期施業委託を請けた管理山林の森林境界や施業履歴等のデータを活用し、より発展したサポート体制を築きます。
これらの取り組みを進めるため、森林経営管理制度と相まった集約化施業の事業連携を引き続き推進します。
(3)原木共同販売体制の構築と事業連携の推進
管内唯一の原木市場である西垣林業三重事業所マルタピアを中間土場として位置づけ、三重県森林組合連合会を中心とした森林組合系統や、管内林業事業体と連携し、原木出荷を推進し、共同販売体制の構築を目指します。
3.高度人財の確保・育成
(1)職員の新規採用と人財育成
職員の育成やICT等を活用した効率化、情報発信を行い、林業未経験の若者や異業種からの転職希望者等の採用を進めます。
また、役職員、現場技能者の一人一人が森林組合関係者としての意識を持ち、知識・技術向上に努めるとともに、やりがいを持ってその能力を最大限に活かすことが出来るよう、組織体制の構築や幹部登用を進めます。
(2)森林施業プランナー・森林経営プランナーの育成
事業を担当する職員は森林施業プランナーの資格を持つ者と位置付け、積極的に育成を図るとともに、将来を見据えた長期的な森づくり、それに担う組織体制など森林組合経営を担う者として森林経営プランナーを育成し、職員の意欲向上と組合の収益力向上につなげます。
(3)現場技能者の地位向上・労働災害の撲滅
労働災害撲滅に向け、休業4日以上死傷病発生人数ゼロを目指し、高基準の安全装備品の装着徹底、機械化の促進に取り組みます。
働きがいのある職場づくりや定着率の向上を目指し、労働負荷の軽減、福利厚生の充実、他業種に負けない賃金水準の確保、就業形態・賃金体系の見直し、能力評価制度の導入、作業技術習得のための研修等に取り組む。
4.協同組合として組合員に信頼される組織体制の確立
(1)組合員の参画促進・組合員ニーズへの対応
組合員との対話を深め、遠隔地の組合員も含めた情報提供の強化や参画促進に向け、広報誌やホームページ等の整備・活用を進める。
所在不明の組合員が一定数あることから、組合員名簿の整備を行うとともに、組合経営の活性化を目指し、若年層や女性組合員など世代交代に向けた取り組みを進めます。
(2)森林組合経営の強化・健全化
令和2年度を終期とした財務基盤強靭化計画において達成した自己資本比率60%以上を維持します。
実践的な能力を有する理事について、職員理事の登用も含めて配置し、体制整備を図ります。
(3)コンプライアンス態勢の強化
すべての役職員が「不適正事案の撲滅」の意志をもってコンプライアンス態勢を強化し、内部監査の導入、専門家監事の登用、内部・外部通報体制の整備、継続的な研修の実施等を進めます。
5.国民生活及びSDGsへの貢献
(1)SDGs宣言の実施
「SDGs宣言」を行い、系統一丸となってSDGs達成に貢献します。
(2)異業種との連携
全国的に農協などの他業種協同組合や商工会議所等との連携が広がっていることを受け、本組合においても他業種との交流・連携を行えるよう、体制整備に努めます。